若き日のシッダールタが悟りを求めて出家した後、不老不死の秘密を求める権力者たちの思惑に巻き込まれ、古代インドの魔境を舞台として繰り広げる冒険活劇。
「幻獣変化」の書き出しから、「神獣変化・覚者降臨編」まで全7編、作者は執筆に15年間を費やした。その間、作者は「魔獣狩り」でベストセラー作家の仲間入りをするのであるが、バイオレンス&エロスが売りの作家評が私の中では定着していた。最近の新聞の連載小説で「西行」の生涯を描き、私のそのイメージは払拭されたようだ。
本作品でも、形而上の世界を全編を通して取り上げ、丁寧に文字に置き換えて行く作業が見事に結実されている。作者のバイオレンス&エロスの持ち味は、要所要所で、その対極として、良好なバランスで全体を引き締めている。
圧巻は最後にシッダールタが覚醒し「仏陀」となり、幾千万の神々に囲まれ歓喜されるシーンだ。この深遠な宗教的テーマを、読者をわくわくさせる冒険活劇として成立させ得た傑作と言えよう。