かつて『アンダーグラウンド』でオウム真理教の破壊的な物語と対峙した村上春樹は、それに拮抗(きっこう)するだけの力をもつ物語の再興を自らの命題とした。その命題へのチャレンジといえるのが本書である。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の内的世界と、『ねじまき鳥クロニクル』で追求した歴史と個の関係は、より深化し、子どもの夢と大人たちのつくりあげた現実の狭間にある迷宮のなかで、さ迷い、成長していくひとりの「少年」へと結実した。そして、ギリシャ悲劇における親子のあり様や、『源氏物語』に登場する生霊などの文学的モチーフが巧みに取り入れられたストーリーは、強力な吸引力をもって読者を離さない。
読み手は、ただ作品がもつ物語の力に身を任せていれば、多彩で奇妙なキャラクターたちや、息をもつかせぬ展開が、充実した読書体験を約束してくれる。そして読後、不思議な感動を味わい、涙を流すことになるだろう。多くの悲しい運命を背負った人たち、たくさんの「死の予感」が涙を誘うのではない。この物語のなかで、子どもから大人へと成長するにしたがい失ってきたものを発見するのだ。そうした自分にとって親密な記憶が、涙とともにとめどなくあふれてくる。(中島正敏) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985)『ねじまき鳥クロニクル』(1994)に続く、1600枚の大作です。
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24 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
もう少し、長く書いてたのではないかなと・・・,
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レビュー対象商品: 海辺のカフカ〈下〉 (単行本)
上巻のレビューで書きました。「下巻の展開が匂う」と。当たらずも遠からず、でした。 下巻を読み終えての感覚としては村上作品のわりには、というかなんというか・・・もちろん面白いのではありますがすっきりしすぎというか「え?これでおわり??」と、ページを繰りつつ思ってしまいました。本当はもっと長かったのをみじかくしたのかしら?とおもうくらい。確かに、村上氏ならではの時代の交差や現実にはあり得ないようなものを、たしかに物語の中では存在しているときっちり感じられる描写など力を感じますが。
84 人中、63人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 1.0
すべての伏線の意味がわからない結末,
レビュー対象商品: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫) (文庫)
上巻からの続き。ネタバレ注意。話の鍵を握る人物が異様に唐突に現れ、結局何者なのかさっぱりわからない。ジョニーウォーカー、カーネル・サンダース。なんか出来の悪い学生演劇を見ているような悪夢だ。 ジョニーウォーカーの謎は結局謎のまま。なんでネコの心臓を食べてたのか。笛って何? で、結局何がしたかったわけ?さっぱりわからず。おそらく人物像を間違えたんだろう。オイディプスコンプレックスってのはわかるけど。姉を犯す話もよくわからず。母と交わるのは一体何の意味があるのか。そもそもナカタさんの事件の原因は?広げるだけ広げて、入り口の石は結局関係のないホシノ君が締めただけ。主人公の少年は一体何をしたのか。お膳立てが整いすぎじゃない? しかも最後は訳知りみたいになっちゃって。 あれだけのページ数読んできて、最後は謎ばかりが残るし、読後感は非常に悪かった。読まなきゃよかったと思うくらい。状況設定も人物描写も心理描写もまるでなってない。新人だったら絶対に下読みで落とされる。流行作家の書くものじゃない。稚拙すぎる感じがする。きついけど、それくらい言いたい。
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
面白かった,
By 太 (神奈川県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫) (文庫)
1Q84, ノルウェイの森、に続いて読みました。それまで、松本清張さん、宮部みゆきさん、堂場瞬一さんらを好んで読んできました。多読家です。 しかし、村上春樹さんの作品を読む前は、「難しそう」と思って食わず嫌いでした。 これらの作品群を心から楽しみました。 決して難しいとは思いませんでした。突拍子も無い部分もありますが、それぞれを分かり易く描いてくれているので、置いてけぼりは食わなかったです。 大人になってから読む本だと思います。性描写も”不可避な事”として受け入れられました。主人公は15歳の少年とは思えず、40代の自分自身と重ねながら読みました。佐伯さんの行動からも、年齢に囚われずに読んで良い、と感じました。 これから、他の作品も読んでいきます。
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