かつて『アンダーグラウンド』でオウム真理教の破壊的な物語と対峙した村上春樹は、それに拮抗(きっこう)するだけの力をもつ物語の再興を自らの命題とした。その命題へのチャレンジといえるのが本書である。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の内的世界と、『ねじまき鳥クロニクル』で追求した歴史と個の関係は、より深化し、子どもの夢と大人たちのつくりあげた現実の狭間にある迷宮のなかで、さ迷い、成長していくひとりの「少年」へと結実した。そして、ギリシャ悲劇における親子のあり様や、『源氏物語』に登場する生霊などの文学的モチーフが巧みに取り入れられたストーリーは、強力な吸引力をもって読者を離さない。
読み手は、ただ作品がもつ物語の力に身を任せていれば、多彩で奇妙なキャラクターたちや、息をもつかせぬ展開が、充実した読書体験を約束してくれる。そして読後、不思議な感動を味わい、涙を流すことになるだろう。多くの悲しい運命を背負った人たち、たくさんの「死の予感」が涙を誘うのではない。この物語のなかで、子どもから大人へと成長するにしたがい失ってきたものを発見するのだ。そうした自分にとって親密な記憶が、涙とともにとめどなくあふれてくる。(中島正敏) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985)『ねじまき鳥クロニクル』(1994)に続く、1600枚の大作です。
--このテキストは、
単行本
版に関連付けられています。
登録情報
|
|
あなたの意見や感想を教えてください:
|
||||||||||||||||||||||
|
最も参考になったカスタマーレビュー
20 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
なるほど、こうきたか。,
By
レビュー対象商品: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫) (文庫)
読むほどにキャラクターに愛着が湧いてくる。
一章ごとに登場人物と場面が入れ替わり、それが終盤に向かって段々近づいてゆく。この辺りの展開の巧さは流石。 不思議な事件、奇妙な人物、不可解な謎が次々と現れるが、謎解きや明確な答えは何も与えられない。しかし、それが不思議と不満には思わない。 人は、答えのない物語に惹きつけられるのだろう。 ファンタジーとSFの世界のような、それでいて登場人物の行動はリアルに迫ってくる。 頻繁な性的描写や泥臭い人間の行動など、これまでの作風からの変化に賛否両論のようだが、面白い物語ということは確かだ。
23 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
もう少し、長く書いてたのではないかなと・・・,
By
レビュー対象商品: 海辺のカフカ〈下〉 (単行本)
上巻のレビューで書きました。「下巻の展開が匂う」と。当たらずも遠からず、でした。 下巻を読み終えての感覚としては村上作品のわりには、というかなんというか・・・もちろん面白いのではありますがすっきりしすぎというか「え?これでおわり??」と、ページを繰りつつ思ってしまいました。本当はもっと長かったのをみじかくしたのかしら?とおもうくらい。確かに、村上氏ならではの時代の交差や現実にはあり得ないようなものを、たしかに物語の中では存在しているときっちり感じられる描写など力を感じますが。
26 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0
やられた・・,
By カスタマー
レビュー対象商品: 海辺のカフカ〈下〉 (単行本)
感想は、むずかしいことは書けないんですが、どうしちゃったの?という感じでした。なんか、この本が後世に残ることを意識されていたのでしょうか。 実在する法人名がたくさん出てくることが今のリアリティを出すことではないと思います。50年後にこれを読めば、こんな店もあったよ、と懐かしさもあるのでしょうが、あまり村上春樹らしくないと思いました。 ほんもののプロレタリアートはもっと汗臭いと思う。分かりやすい方言やわい談でそれらしく装っても筆者自身の育ちのよさがホシノさんに反映されてしまって??うもホシノさんが嘘くさい存在に思えてしまう。ナカタさんの不思議キャラには感情移入できましたが。大島さんも中途半端。女性運動の二人組みの悪さもベタすぎて幼稚な印象を受けました。 今回は村上春樹独特の「感じの良い不思議」がうまくかたちになっていなかったように思いました。 前半はわりと面白かったので星ふたつです。
あなたの意見や感想を教えてください: 自分のレビューを作成する
|
最近のカスタマーレビュー |
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|