『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985)『ねじまき鳥クロニクル』(1994)に続く、1600枚の大作です。
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81 人中、63人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
読者の想像力が試される作品,
By カスタマー
レビュー対象商品: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫) (文庫)
恥ずかしながら村上春樹氏の作品を初めて読みました。独特の寓話性というか発想に一種の衝撃を受け、今後過去の作品を読んで見たくなりました。この作品について言えば、読者のイメージ(創造力)を重視し、謎は謎のままあえて具体化してない点が良さかと思います。佐伯さんは、15歳の佐伯さんなのか50歳の佐伯さんなのか、田村カフカが愛したのはどちらなのか。またその佐伯さんを女性として愛したのか、失った母を求めたのか。また、佐伯さんはカフカに対し過去に失った恋人を求めたのか、それとも子供への愛なのか。過去と現在の時の狭間で動く心に永遠というテーマを感じました。また、ナカタさんという人間が入り口を開けてまた締めるというトリガーとして登場していますが、不思議な存在感を発揮し、作品全体の雰囲気を穏やかで神秘性のあるものにしているところも魅力かと思います。現実性に関し厳しい書評が多いですが、この作品に現実性は求める必要は無く、むしろ現実性は排除して読んで頂きたいと思っています。
93 人中、71人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
万人受けではない,
By
レビュー対象商品: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫) (文庫)
本屋さんで平積みしている人気作家の作品だからって、万人受けするとは限らない。村上春樹をよく読みこんでいる人の間でさえ、本作は毀誉褒貶が定まらない。だから春樹デビューをしたい人は、まず図書館などで借りて下読みしてから注文されることをお勧めする。 本作は村上作品の中でも特殊な文体で進行するし(カフカくんの章)、ナカタさんの章は童話的にほのぼのしていてホッとするからって油断して読み進んで行くととんでもない場面に出くわすのだ。コケると最後までたどり着けない。物語の主人公カフカくんの自己制御力は15歳という年齢設定からすれば異常とも思えるほどだが、清潔を保つ習慣や体作りを怠らないこと、栄養バランスの取れた美しい食べ物を好み、孤独を孤独と思わず、クラシック音楽や古い文学作品を愛する教養などは、どれも作者・村上春樹氏の美意識に適っていることばかりである。逆に正反対ともいえる星野青年の造詣こそが、作者のプロとしての力の現れとも思える。 村上春樹の世界観を「分からない」と思える感覚はある意味で正常だと思う。この暗さ、救いの見えないやりきれなさ、痛みを万人が意識し出し肯定するような世界は異常である。恐らく春樹読者の半数くらいはあんまり面白いとは思っていないのではないだろうか。 村上春樹がいくらノーベル賞候補の聞こえの高い人気作家であっても、彼に引きずられて孤独を自覚する人が増えるよりは、素直に「分かりません、好きじゃありません」と言える人が増えたほうが健全である。ハマればのめりこむのは必須だが(私のように)。
128 人中、97人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 1.0
最悪の駄作。,
By
レビュー対象商品: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫) (文庫)
村上春樹はもはや、自作のパロディしか書けなくなってしまったのではないか? 目についた欠点を、ネタバレにならない範囲で挙げてみる。 ・展開の一つ一つが行き当たりばったりで、奥行きに乏しい。 また、個々の事件が「象徴的」な形でしか起こらないため、 小説世界全体がひどく薄っぺらに感じられる。 ・少年小説であるがゆえの妙な目線の低さと、そこから来る説教臭。 「一般大衆」に歩み寄ろうとしながら、 同時に「しょせんこの程度でオッケー」と たかをくくっているかのようだ。 ・甲村記念図書館の「佐伯さん」「大島さん」という、 重要な脇役二人の存在感が、あまりに希薄。 『ノルウェイ』のレイコさんなどと比べると、 ほとんど雲泥の差がある。 ・会話一般がひどい。 「大島さん」がパエリアを食べつつ、 「スペイン戦争に参加するんだ」などと言い出しておきながら、 「性別不明の血友病の人間が戦争に参加できるわけないだろう」と 顔をしかめて言うまでの一連の会話(31章)は、ほとんど噴飯もの。 同じく「大島さん」が、 戯画化された教条的フェミニスト二人組をやっつける場面にも、 まったく感心できない。 ・執筆中に触れたであろう書物や音楽への言及が、 単なる感想の垂れ流しに終わっている。 ・「海辺のカフカ」の歌詞が空虚で訴求力に乏しい。 ・カフカ少年が登場する章で押し通される、 現在時制の日本語の緊張感のなさ。 『世界の終わり』英訳からの逆輸入と思えるが、成功していない。 ・全篇を支配する重要性を持つはずの、 カフカ少年の父親の「呪い」(のごときもの)の、 圧倒的説得力の無さ。 それに伴うギリシア悲劇の引用の空虚さ。 正直なところ、「これは駄目だ。問題にならない」と、 真剣に言ってあげられる人間が、 村上春樹の周辺には一人もいないのだろうかと思う。
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