内容は死角が感じられず、零戦も陸軍の一式戦闘機などと同じく、精強であったのを示している内容です。これを読んで感じたのは、P−38とF4Uが本領を発揮しているとは言えず、F4Fも米軍が評価していたほどは勝利していないと強く思いました。一方、P−40が意外に強いと実感させられる感じもしました。第49、8戦闘航空群のウォーホークとライトニングは第13航空軍より手強いとするのも、賛同できる内容でした。
内容に明らかな間違いも見受けられました。第49戦闘群はダーウィンにおいて、42年3月ー8月の間、零戦38機、陸攻26機の撃墜を報じ、P−40の内15機が撃墜され、4機が不時着した(これは味方対空砲に撃墜されたものを含んでいます)。著者は三空の零戦は8機、陸攻(高雄空)1機が撃墜されたとしています。三空の零戦8機は納得がいきますが(ホーン島の四空損害を含めると10機)、陸攻の喪失「1機」は謎です。三空が護衛した際、高雄空の陸攻被撃墜、不時着数は12機です。実は42年のダーウィンの戦いは、カナル航空戦の前にしてはかなりの激戦にも関わらず知られていません。他にも第49戦闘航空群の誤認率は多いと称していますが、それこそ三空はそれ以上に過大な122機(不確実撃墜を含む)撃墜を報じているのに触れるのは皆無でした。あまりにも簡略的なのには疑問を感じました(もっとも、この戦いは続刊で取り上げられる可能性もありますが)。
表紙を見ると、「零戦が連合軍機に勝利していた」と錯覚される方が多いと思いますが、数字を見ると、米軍側喪失は爆撃機、攻撃機、偵察機を含んでいます。零戦喪失151機に対して、「連合軍機」205機とされているのです。同じ基準で日本軍が失った艦爆、陸攻を含むと軽く60機を越えてしまいます。ビルマ航空戦や陸軍戦闘隊撃墜戦記では日本軍の重爆と軽爆の損害も勘定にいれて評価していたため、かなり日本海軍に甘目の判定と感じました。 もっとも、あくまで「零戦戦記」であり「海軍戦記」ではないため、この比較は正しいのやもしれませんが・・・
他にも以前の著書では「米軍機の喪失は陸軍戦闘機によるものではなく対空砲や事故によるものかも知れず・・・」が多いのに対し、「この損害は零戦によるものである可能性が高い・・・」とする記述が多く見受けられました。日本人だけあって、零戦には特別な思い入れがあるのは分かりますが、いつもとは違う感情も見られたのも事実です。
上記も踏まえた上で、本書をどう判断されるかは最終的に読者が自身だと思います。次巻にも期待しています!