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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
たしかに"パワー・ブック",
By WMBUSH (Tokyo Japan) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 海賊と刺繍女 (集英社文庫) (文庫)
数年前、ミルトンの「White Gold」を読んで以来、北アフリカの海賊(本作の著者によれば、正確にはコルセールですね。)がコーンウォールや海峡諸島にまで来寇していたことに興味を持ち、いろいろな文献を読みあさっていたときに、本作に出会いました。本作では、刺繍家で、友人の夫と不倫関係にあった主人公と、海賊に掠われて遙かモロッコまで赴き、数奇な生涯を送った過去の物語のヒロイン、この過去と現在の二人の女性の物語が、一冊の本の余白に書き込まれた手記を媒介に、微妙にシンクロしながら進展していきます。 物語の軸となる、刺繍の本に書き込まれた女性の手記・・・はフィクションだそうですが、いかにもありそうな設定で、稀覯本を巡るミステリーとしてもなかなかよくできていると思いますし、歴史的考証もしっかりしていて、歴史ミステリーとしても、安心して読んでいられます。 そして、なによりも、素晴らしいのは、この物語に登場する人々です。葛藤の末に、いままでの自分にきっぱり別れを告げて、自分の選んだ人生を送ろうとするヒロインたち。脇役も、海賊アル・アンダルスィーとイドリス・エル・カルクーリの二人が、陳腐なステレオタイプに陥ることなく、ちゃんと人物像を掘り下げて描かれていましたし、(なんと、著者のご夫君がモデルなんですね。しかも、本作の執筆中に知り合ったとか・・)狭い世界に満足して、それ以外の価値観なぞ存在していないと信じていた、まじめで純朴な田舎者ロバート・ボライソー青年の価値観崩壊の末の転落人生が、彼が残した手紙(遺書)によって全て描きだされているのも秀逸です。 本作のラスト、日没の鈍く赤い光のなかに浮かび上がるSt.マイケルズ・マウントの島影・・のシーンを読んだ時には、海から吹き上がってくる潮風を本当に感じ、なにやらぞくっとしました。本当に、記憶通りなので。コーンウォール出身の著者にしか、描けない情景です。 自分をとりまく閉塞した状況にいらいらし、戦おうとし、でも、いつのまにか、その状況に流されてしまっていると感じている女性は多いと思います。21世紀も17世紀も、厳しい目で見れば、あんまり変わらないかも・・・本作は、そんな女性に、えいっと一歩踏み出す勇気(パワー)を与えてくれます。かく言う私も、実はあることに関して、大いに勇気をもらいました。 ああそうだ、なんで「パワー・ブック」かって?詳しくは、本作の「訳者あとがき」をごらん下さい。
2 人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
翻訳が素晴らしい / パワーブックになりえます。,
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レビュー対象商品: 海賊と刺繍女 (集英社文庫) (文庫)
一気に読める面白い本でした。翻訳が素晴らしく、翻訳されている文章だということを全く意識させません。最所さんの圧倒的な筆力です。主人公ジュリアや、様々な登場人物の、満たされない生活や愛への執着や小さな固まった世界観から脱出する旅について書かれているように思いました。私たち誰もが日々行っているこの執着することの痛々しさと悲しさを、とても客観的に見せてくれます。 この旅に導いてくれるのが、200年前に生きた魅力的な第二の主人公キャサリンです。彼女には初めからこの執着がありません。どんな時にも前を見てまっすぐと光を目指します。何かの犠牲になるというような偽善も行いません。生きる場所、愛、宗教のダイナミックな変化にさえも流されていくことを恐れないのです。嵐に翻弄されながらも破滅することなく、大きな幸せをつかんでいきます。 本の最後では、様々な登場人物の執着や、固まった世界観の苦しみが解きほどかれて満たされしっかり成仏・開放されていくことになります。 作者がこの本を執筆活動中、自らが書いた登場人物キャサリンに導かれた旅先で運命的な出会いをして結婚した為、この本は、パワースポットならぬパワーブックと言われているそうですが、読みきってしっかりと影響されたならば、確かにこの本はパワーブックになりうると思いました。
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