良く云われる通り、この本の中でも、今の市川海老蔵が先代團十郎と面影が似ていることが何度か話題になります。その際の海老蔵の言葉、
「でも、親父(十二代目市川團十郎)には、俺や祖父さんにはないものがある」
が印象に残りました。
江戸歌舞伎、荒事の始祖である市川團十郎の名跡を劇聖と云われた9代目の次に襲った先代團十郎の覚悟と孤独に裏打ちされたカリスマは、現團十郎にはありません。現團十郎がマスメディアや舞台で見せる他との融和「皆の團十郎」とも云うべき親しみやすさがあります。しかし、同じく若くして父辰之助を亡くした現四代目尾上松緑の指導について語った言葉は、彼の大きさを物語って余りあるものでした。
「(尾上松緑に)こうこうこうするんだよって教えてね、舞台で見ると、俺が教えたのと違うわけ。親父さんの型なの。でもね、死んだ親父さんのビデオ観て、そうやってやってるのを見てると、『俺が教えたのと違うじゃないか』なんてとても叱れないですよ」
他に、現海老蔵の意外なやさしい面も書かれており、成田屋贔屓でなかったわたしも、成田屋が大好きになった一冊でした。