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ジャンル的には「レスキューもの」であり、有名なところでは「め組の大吾」と言う、消防士の活躍を熱く描いた名作があるが、それと劣らぬ熱さを見せている。
もっとも、この海猿の主人公は海上保安庁という、消防よりもさらに実態のよく知られていない職業である。
新米の主人公仙崎大輔は何の特殊技能もない平凡な青年だが、人の生死を前に凡庸の殻を破り、急速に成長を遂げていく。
「絶対誰も死なせたくない」という確固たる意思力が原動力となり、奇跡のようなレスキューを成功させていく物語はフィクションとはいえ感動の一語に尽きる。
また、この物語は主人公の成長の記録でもあり、情熱や友情、時には愛に揉まれながら、人の死や、運命に翻弄されつつも、自分を見失わず、前へと進み続ける。悲惨な海難事故を扱う作品なのに、それほど暗さがないのはそれが所以であろう。
序盤~中盤の潜水士訓練のシリーズを経て物語は加速していき、後半の航空機墜落のシリーズは作中でもかなりの盛り上がりとエンターテイメント性を見せ、なるほど、映画化も当然と思わせる。
特に航空機墜落のエピソードは実際の日航機墜落事故に良く取材し、細かいところでリアリティを感じさせながらも、フィクション的な救いを持たせていて胸が熱くなった。
生と死の鋭く交錯する「現場」の雰囲気を堪能できる傑作である。
『ブラックジャックによろしく』と同様『海猿』で扱われるテーマは
「救出」だが、医師と違い海上保安官の場合は、常に自分の命が危険に
さらされる。医者の場合は患者の命と自分の命を引き換えにするような
場面は少ないだろうが、海上保安官であればそういうことは常に現場で
つきまとうに違いない究極の葛藤である。時に、自分が死なないため
に、目の前にいる瀕死の被害者やバディ(仲間)を放っていかなければ
ならない。というよりも自分が助からなければ救出という仕事自体が完
遂しないのだ。この非日常的なディレンマを体感できるだけでも、この
『海猿』という作品は読む価値があると思う。
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