海炭市叙景。
すでにこのタイトルだけで気持ちつかまれた方は迷わず鑑賞してください。
おなじ街(海炭市)で暮らす人々や戻って来た人をオムニバスっぽく切り取ったお話です。
登場人物それぞれがなんらかのいきずまりや閉塞感を心に澱のような形で抱え込んでいます。
個人的には職をなくした兄と妹が初日の出を見に行く話。プロパンガス販売の夫婦と子供。立ち退きを迫られた老婆と猫のエピソードが好きです。
特にプロパンガス販売の加瀬亮の演技は秀逸で今までの出演作でベストアクトというぐらいいい演技をしています。
あと三浦誠己も印象に残るたたずまいをみせていますね。
特筆すべきはキャストに函館の一般の人々(素人)の人々をキャスティングしているということです。
加瀬亮の奥さん役の方。子役の方。市電の運転手の方。老婆の方。
皆さんとても自然な演技をされていてびっくりしました。役者に一歩もひけをとっていません。
撮影の近藤龍人さんもすばらしい仕事をしています。風景や人々。特にシャドウ部(黒)の陰影と奥行きがすばらしいです。
すごく湿度を感じる画面。街の空気感。ジムオルークの音楽も色をそえています。
けして明るいエピソード群ではありませんし
暗くて随分救われない話ばかりだという感想を持たれる方もいらっしゃると思います。
そんな印象も全く否定しません。
ですが見る方によっては多分すごく響く作品だとおもいます。
自分自身が否応なく置かれている場所で自分にふりかかる運命(あるいは自分が呼び込んでしまった出来事)に
ある人は抗いながらある人は流されながらも生きている。静かに息をしている街と人々。
そんな息使いがこちらに伝わってくる気がしました。
もう一度じっくりと見返したい秀作です。