まず最初に言っておきますが、
本作には柳生も妖術も特撮も宝塚も登場しません。
こう書くと、従来の荒山小説に慣れた読者諸兄は、
「えー、妖術も柳生も無し?捏造も?ホモもないの?」
などと思われるかもしれませんが、
結論を出すのは少しお待ち頂きたい。
何故ならば、本作では柳生や妖術による派手な演出が無いが故に,
「歴史伝奇」ではなく「歴史小説」としての荒山小説が表れているのですから。
本作は,朝鮮の歴史の中で生きた様々な立場の人物、
そして、彼らを容赦なく巻き込む大きな歴史の流れと、
それに対し,彼らが如何に対峙したかを描いた作品集です。
「その国のことを知るには,まず歴史でしょう?」
というのは荒山先生の持論ですが、
そういう意味で、本作は「日本の隣国、朝鮮という国を知って欲しい」という
荒山先生の想いを端的に表しているものと言えます。
そんな本作に収録されている4本の短編のうち、
2本において主役を張っているのが李舜臣将軍です。
思えば,荒山先生の第1作「高麗秘帖」も彼が主役の一人だったわけで、
ここにも、荒山先生の意気込みを感じられます。
というか、
「柳生も妖術も花拳繍腿!朝鮮こそ荒山小説の真髄よ!」
という荒山先生の声が聞こえるような趣であり、
まさに朝鮮ネタ一本槍であり、イノセント朝鮮ワールドでアリマス。
これを機に、人外魔境か世紀末世界かと見まがうばかりの朝鮮ではなく、
「日本と同じく、長い歴史を刻んできた朝鮮という国」の物語を
味わってみられるのも一興かと。
たまにはこういうのもいいものですよ。