「中国やアメリカよりも海岸線が長い国」
それが日本であり、そこに文化が生まれないわけがないと言われれば、なるほどそうかと思う。
本書はそんな「海岸線からの視点」で日本史を(時に世界史の視点も交えながら)説いていくもの。
今までなかった新しい歴史観を提示してくれる、とてもスリリングな一冊だ。
「海というものに対する信仰」や「海岸線の変化とその影響」など、本書には興味深い記述が多いが、白眉は何と言っても、江戸期から明治期にかけての「海岸線」に対する意識の変化だと思う。
たとえば、敦賀や酒田、鞆の浦など、江戸期に栄えた港町で、明治以降往年の輝きを失ったところは多い。
その理由は東京への一極集中や鉄道の発達、それによる海上輸送の地位低下などに求められることが多かったが、本書では「港の水深の深さ」を、その理由の一つとして挙げる。
西洋の大型船が入るには、水深の深い港が必要だったのだ。
確かに、横浜や神戸、新潟や函館など、現在でも港湾都市としてにぎわっているのは、水深の深い港だ。
これなどまさに、「海岸線からの視点」がなければ見えてこないものだろう。
書き口も無味乾燥ではなく、清河八郎の日記を縦糸にしたりと、歴史ファンにはたまらない一冊だ。