この作者の前作「映画英語のリスニング」のファンなので、次はいつ出るのか、とクビを長くして待っていた。今回「ストーリーで学ぶ英語リスニング」を大変期待を持って購入した。
話の展開がとてもおもしろく意外性に溢れていて、教材ということを忘れて楽しんでしまった。しかし何と言っても、英語学習者がつまづく音変化を、緻密に、かつわかりやすく網羅している点が有り難い。CDの終わりに作者自身が音声について解説していて、音声学の理論にしっかり基づいた音のエクササイズがたくさん盛り込まれていて大変役立つ。ストーリーが進むにつれて難度が高くなり、スピードが上がる点も、程よくチャレンジングで良い。今回は音そのものだけではなく、プロソディという点にも軸足をおいているのを感じた。
海外の映画やドラマを英語学習にうまく活用できれば、英語のリスニング力を効果的に養うことができる。しかし自分が好きな映画やドラマの台本が必ず手に入るとは限らないし、疑問点が解消されないままになることが、独学で映画・ドラマで学ぶ際の難点だ。また台本が手に入っても、台本のように発音されているとは思えない音がたくさんあると、映画やドラマを使って独学しようという気持ちが萎えてしまうものだ。そんな中で、この本はすべての希望を叶えてくれる。必要な音変化やプロソディを、オリジナルの脚本の中にすべて盛り込んだこの教材はすごい。よくもこうも自然に盛り込めたものだと関心してしまった。
英語音声学は大学の英語専攻の学科で学ぶしかないが、この本のCDを聞くだけで難しい音声的な仕組みを、そうとは感じずに自然に体感し独力で身につけることができる。しかも思わず暗記したくなる気の利いたセリフや簡潔な言い回しが多いことも嬉しい。私は英語の教員だが、学生に自律学習と良質なインプットのために、この本を薦めている。