心が疲れたら藤沢周平ワールドにさまよい出て癒す・・・できれば、温泉でもあれば最高だ。
ということで、藤沢氏の故郷、山形の鶴岡(荘内藩)をモデルにした、東北の小藩海坂藩を舞台にした短編を集めた企画である。所収の短編相互も、海坂藩を舞台にした長編とも関連はないようだ。共通の登場人物なんか配したら、もっと素晴らしい海坂藩のバーチャル世界ができたんだろうに(むしろ、地名を含めて意図して重複させていないようだ)。
正直、昭和48年初出のものなどもあって、独特の雰囲気はさすが変らないが、構成力などは晩年の水も漏らさない名人芸の数々にはおよばない作品も多い。
なかでは、公儀隠密の寂涼感と矜持を描いた「相模守は無害」、エンディングには難があるものの下級武士の生活の描写が素晴らしい「唆す」は傑作。