中国において王朝が滅びるときには、朝廷が腐敗し、民を苦しめ、農民反乱が多発し、やがて天下取りレースがはじまり、乱世を平定した「英雄」が新王朝の始祖となるというのが、たいてのパターンですが、宋滅亡においてはその型はあてはまらない。なぜなら、宋の朝廷はまだ腐敗していなかったし、人心も離れていなかった。そして最後の皇帝は、何の罪のない子どもだったのだ。ゆえに、モンゴルの行動は侵略以外の何ものでもなく、大義名分すらたたない。
この作品は、宋王朝が沈むとき、最後まで元軍と戦った宋の士大夫たちの姿を描いたものである。一応、主役は有名な状元宰相の文天祥だが、彼だけの活躍が特記してあるわけではない。宋の士大夫たちの、それぞれの生き様を記しており、読んでいくにつれ、痛ましさが増していきます。幼い皇帝を背負って海に身を投げた陸秀夫、そのあとを追った国舅、宦官、宮女たち、幼主や皇太后を失ってもなお元軍と戦おうとした張世傑、そして元軍にとらえられ四年間監禁されながらも、ついに元につかえることをよしせず、宋の臣下として刑場の露と消えた文天祥。死を求めることが必ずしもよいとは言えないかもしれませんが、彼らの生き方は尊敬に値するものだと思います。