湾岸戦争が終結したのちの91年9月に政府が国会に提出したいわゆる「PKO法案」は、著者によれば、88年12月に成立した「消費税導入法案」といくつかの点で共通しているという。一つは、政権側が度重なる廃案の憂き目を見ながらも、執拗に立法にこだわり続けたこと、もう一つは、これらの法案の必要性の裏には、表向きの理由とは別に政治的な思惑があったと、である。PKO法案の前身であり、90年10月16日に国会に提出されて結局廃案になった「国連平和協力法案」は、前田哲男によれば「ずさんな内容、あいまいな法解釈」に基づいて作成されたものであり、その後装いを新たにして再度提出されたPKO法案も、その否定的な特徴をしっかりと受け継いでいた。本書は、「国際貢献」の美名のもとに、自衛隊の海外派兵という戦後史を画するような政治的大転換の政策決定が、いかにいい加減で場当たり的な法解釈と政治的野心によってなされるに至ったかを詳細に示すルポルタージュの金字塔と言ってよい良書である。本書を読み終えて、「モノやカネだけでは不十分だ。ヒトも出さなくてはならない」というもっともらしい言説がいかに胡散臭いものであるかがわかった。