物語は快調に進み、第6話は文庫1、2巻でどことなく気になっていたヴェネツィアのライバル、ジェノヴァとの抗争が主題に据えられ、明快に記述されていく。個人の突出を許さなかった典型的な共和国体制のヴェネツィアと、2大グループの対立・内紛に明け暮れていた、それでいて個性的で活気に満ちたジェノヴァとの100年を超える戦争、特に「キオッジアの戦い」の詳述は、大変に面白く読むことができた。
後半の第7話は「ヴェネツィアの女」。貿易や戦争、内政は男に任せ、自ら政治に容喙することのほとんどなかったヴェネツィアの女性の姿を教育、結婚、衣装、装飾など、生活全般の多岐にわたって活写。著者は同性としての洞察と理解と興味を示しつつ、それでいてどこまでも中性的なスタンスでこの第7話を締めくくっているように見えた。