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海の翼 (新人物文庫)
 
 

海の翼 (新人物文庫) [文庫]

秋月 達郎
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (10件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

イラン・イラク戦争開始から五年後の一九八五年(昭和六十)三月七日、イラク軍は突如、三月十九日以降にイラン領空を飛ぶ航空機の無差別攻撃を宣言。自国機の乗り入れのなかった日本は、イラン国内に取り残された在留日本人の救出対策に苦慮する。タイムリミットが迫るなか、日本人の苦境を知って、救援に動いた国があった…。このトルコ政府の英断の裏には、明治二十三年(一八九〇)九月、日本訪問から帰国中に紀州沖で台風にまきこまれたトルコ軍艦エルトゥールル号遭難の悲劇があった―。百年の時空を超えた“恩返し”を描いた感動の書き下ろし長篇大作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

秋月 達郎
1959年愛知県生まれ。映画のプロデューサーを経て、1989年、作家に転身。以後、歴史を題材にした作品を多く発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 414ページ
  • 出版社: 新人物往来社 (2010/1/5)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4404037910
  • ISBN-13: 978-4404037916
  • 発売日: 2010/1/5
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (10件のカスタマーレビュー)
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27 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 和歌山県の串本沖に浮かぶ紀伊大島は、僕がセーリングやダイビング、カヤッキングなどをするために、これまでに何度も訪ねたことのある島だ。太平洋の荒波に洗われる島の南側には断崖絶壁が切り立っており、天候の穏やかな時でも島へのアプローチは容易ではない。

 そんな大島沖で世界の海難史に残る大きな沈没事故が起こったのは、1890年(明治23年)のことだ。事故を起こしたのは、日本への親善航海から帰路についたばかりのオスマン帝国(現トルコ共和国)の軍艦「エルトゥールル」である。

 この海難事故に際して、当時の大島島民が行った献身的な救援作業と、日本中に拡がった遭難者への義援募金運動、また「金剛」「比叡」という2隻の軍艦を仕立てて救出されたトルコ兵たちを本国まで送り届けた連合海軍の行動は、当時のトルコの人々に深い感動を与えたという。

 日露戦争で日本がロシアを打ち破ったことから、トルコが親日的な国になったという話はよく耳にする。しかし、実はトルコ人の親日感情は「エルトゥールル」の海難事故を契機として芽生えたものであり、トルコの人々はその話を代々語り継いできたと言う。そんな想いが思いがけぬ形で日本に返されたのは、イラン・イラク戦争真っ最中の1985年(昭和60年)のことである。

 同年3月17日に、イラクのサダム・フセインは「3月19日の20時半以降にイラン上空を飛ぶ全ての国の航空機を無差別撃墜する」と宣言した。脱出までに残された時間は僅か48時間しかなく、当時イランに滞在していた外国人たちはパニックに陥った。

 欧米諸国はテヘランに緊急の臨時フライトを飛ばすなどして、自国民の脱出を粛々と進めた。しかし、当時の日本では社会党などが自衛隊の海外派遣に猛烈な反対をしており、このような非常時においても自衛隊機を飛ばすことができなかった。また、日本航空の経営陣は救援機を飛ばす決意をし、パイロットもフライトの準備に入っていたものの、信じがたいことに同社労働組合の激しい抵抗によってそれも実現しない。

 そんな困難な状況下において、トルコ共和国が日本人救出のための特別機をテヘランに飛ばしてくれた。同地には日本人を遥かに上回る数のトルコ人がいたと言うのに、彼らは自国民を陸路にてトルコまで脱出させ、特別機では日本人を救ってくれたのである。そして、この行動に対してトルコの政府は「ようやく『エルトゥールル』の恩返しをすることが出来た」というメッセージを発した。

 様々な権謀術数が渦巻く国際政治の世界だが、それでも国と国の関係において非常に大きな役割を果たすのは人々の想いであり、個々の人たちの信頼関係の積み重ねであることは歴史が証明している。熊野灘の島から始まった二国間の関係が、これからも良いものであり続けることを願ってやまない。本書を読み終えて、改めてそう思った。
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By Shige
形式:文庫
この作品には現代日本人が忘れている大切なものが記されています。それは恩に報いるという人の道についてです。明治23年の紀州串本沖でのトルコ使節艦エルトゥ−ルル号の殉難と、昭和60年イラン・イラク戦争時になされたトルコ政府のトルコ航空機による邦人救出が、恩に報いる人の道として如何に繋がっていたか!読み進むうち心熱くなる秀作です。海の翼 (新人物文庫)
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
本書は、かぎりなくドキュメンタリーに近い小説である。
舞台はイラン・イラク戦争開始から5年後、1985年3月のイラン。イラク軍は突如、3月19日以降にイラン領空を飛ぶ航空機の無差別攻撃を宣言。日本政府は救援機を送ることを断念し、イランに数百人の日本人が取り残された。手に汗握る展開。
これを救ったのが、トルコの民間航空機である。
なぜ、トルコが、しかも民間の航空会社が日本人を助けたのか。100年以上前に起きた「エルトゥールル号」の事故を振り返りながら、日本とトルコの親密な関係を、大河ドラマ仕立てで紹介していく。

巻末の解説で、映画監督の井坂聡は「百年前、私はおろか私の両親もこの世に生まれていなかった。百年後、私は勿論、残念ながら私の子供たちもこの世にいないだろう。百年とはそういう単位の歳月である」と語る。
トルコの軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で遭難したのは、いまから120年前の出来事である。その時、海岸に近い大島村の住民は、生き残ったトルコ人船員たちを助け出し、献身的な介護を施した。その時の恩を、トルコ国民は今でも忘れていないという。

恥ずかしながら、「エルトゥールル号」の事故は知らなかった。ただ、イラン・イラク戦争の折り、イランに取り残された日本人を救出するためにトルコの民間航空機が活躍したことや、1999年のトルコ大地震の時には日本政府が緊急援助を行ったことは覚えている。こうした関係は、120年前の「エルトゥールル号」から始まっていたという。
トルコ首相が日本人大使に、こう語る場面がある。「人から人へなにごとかが伝えられ、さらにまた人から人へなにごとかが伝えられる。歴史はそうしたことの積み重ねで成り立ってゆく」――。
憎しみばかりでなく、親しみ・喜びの歴史を子どもたちに伝えていかなければならないと感じた。
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