この本は大きく建築的なフェーズと文化?よりのフェーズのに方向から論じられている。しかし、スタディーズという名称とはおよそ名ばかりのものだと思う。
まず建築よりのフェーズだが、畔柳研究室は全国の海の家の建築物そのものについてはよく調べていると思う。しかし、その建築がどういった環境の中に立脚しているのかという視点が全く抜けている。そのために単なる海辺の汚らしい仮設建物のガイドブックに終わってしまっている。
建築とは、その環境に立脚するものではないか。そうしたものが見えてこない以上、2軒の建築というスタディーを通してもそれは建物を建ててみるというだけでしかない。海の家は人間くさく、どろどろとした部分がある。その辺をあえて捨て去って語るというのは汚い部分は見ないご都合主義とは言えまいか。
さて文化よりのフェーズだが、今ひとつはっきりしない。そもそもテキヤの延長線上にある海の家に文化が存在するのかという点そのものが検証されず、文化はあるものという決めつけの上に語られている。ここで語られている海の家は地元で、違法駐車、騒音、治安など軋轢を呼んでいるものも多い。それらを隠して環境保護などと美化するのはご都合主義だろう。編者のライターの意図は文化はありそれを論ずることが後半の趣旨だと思うが、未消化なものを面前に押しつけられたようで面はゆい。また簡単なことを、わざと難解に書く文体も問題だ。鹿島出版会ともあろうものがそのあたりを見抜けないのは問題だと思う。
本は薄く瀟洒な作りだが、この内容ではいかにも高い。損をした気分だ。