読者の好みによって、好き嫌いの表れる作品群だと思う。
日常を生きる者にとって、現実という世界は一見、規範や常識などに固く支配されているように映るかもしれない。だが、違和感を覚えることはないだろうか。
それは、たとえば漠然とした不安や疑問の形をとって現れる。おそらくは多くの人が心のどこかで感じ、あるいはこれから感じるかもしれない(人の死に際して、諍いの最中に……など)。
その違和感は、ありふれた(と信じている)世界の狭間に由来するのではないか。そこにある曖昧なものの本質を探るための、一つの側面を、この作品群は描き出している。
感じ方も生き方も人それぞれ、ゆえに好みが分かれるのではと思う。世界の狭間に惹きつけられる者ならば、この本からそれぞれの収穫を得られるのではないだろうか。
文章は平易な言葉の中に、微妙さが表現されている。
『牛乳のお椀』が秀逸。個人的には、あの三ページのために五百円を出しても惜しくないと思った。