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35 人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
暗い、暗い海,
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レビュー対象商品: 海と毒薬 (新潮文庫) (文庫)
暗くてどんよりとした海。流れてはひいて、ただ同じ営みを永遠に繰り返すような、その捕らえどころのない海・・・。捕らえどころのない日本人の罪の意識。確固とした神を持たないことで、はっきりと姿を現すことのない罪のかたち、その不気味さ。作者はそれをこの小説にて絶妙に描き出している。特に戸田の子供時代の独白には、本当にこずるい子供になら誰にでも起こりえるような無意識の演出・・・自分をよく見せよう、自分の人生をレールからはずれないようにしよう、他人からより多くの賞賛を得よう、として行う演技、ほんの少しの罪・・・が克明に描かれている。世間にそれらが露呈しない限り、戸田の罪は裁かれることがない。そして彼は何の障害もなく、「先生」と呼ばれあがめられる医者の職を得て、何食わぬ顔をして生活している。彼の罪は、寄せては返す漆黒の海に、ただ、呑まれてたゆたうのだ。 きっとそんな罪の埋没は、私のすぐ身近なところにも存在している。そして勿論、私の中にも・・・。それは、不気味なことであると同時に、とても興味深い。罪を埋没して、人を普通に生かす「黒い海」が、きっと私の心の中には確かに存在しているのだ。 自分の精神の原点に立ち返り、今一度自分を見つめてみたとき、そこに知らない、底知れぬ黒い穴を見つけてしまったような、すっと背筋が冷たくなる不気味さがある。見知らぬ自分が、そこには居る。 自分について、日本人について、深く考えざるを得ない、とても興味深い一冊。
20 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
良心の模索,
By toyoji (近畿) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 海と毒薬 (新潮文庫) (文庫)
世界大戦下、戸田と勝呂という二人の医学生の、アメリカ人捕虜の人体実験という倫理的・人道的背反に対する対照的な態度を軸に医学に携わる者の良心のあり方を問う秀作。実話をもとにして人間の内面的葛藤を掘り下げていて、単なるスキャンダルの暴露ではなく、もともと存在していた医局の派閥争いに倫理的問題と登場人物の生育歴を絡めて複雑な心理描写がリアリティーを持って表現されている。戸田と勝呂は性格的には対照となるように書かれてはいるが、両者とも医者として、および人間としての良心の所在を模索しているという点で共通している。この作品に限らず、人間の弱さと苦悩に光を当て、心の深層を追求している著者のテーマの一貫性に惹きつけられているのは私だけではないと思う。短編ではあるが、深く重い1冊である。
11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
実際にあった人体実験事件を題材に日本人の心理に迫る,
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レビュー対象商品: 海と毒薬 (角川文庫 緑 245-1) (文庫)
戦時中に実際に起こった、旧帝大の人体実験を題材にした作品。遠藤周作はこの作品で、その手術に立ち会った人々の罪の意識に迫っている。 どうして、その手術に参加することを断れなかったのか? 手術に立ち会う人々の、何の変哲もない過去の話が実際の手術の前に、 主人公が見る海の描写が、独特で不気味な日本人の心理をうまく描き出している (解説適当です…が、かなりいい本です。)
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