数万年、数千年、数百年、数十年前の過去と、現在が同列に語られ、考古学と民俗学、文化人類学、言語学、遺伝子解析、海洋実験など多様な学問が同列に語られ、読む方も頭を切り替えながら話題に追い付いていくのが大変でしたが、これを書かれた著者は、本当に大変だったろうなぁと言うのが、率直な感想です。
2003年3月出版の前作「海を渡ったモンゴロイド」も読みましたが、日本人には馴染みの薄い南洋の考古学を、主に発掘された物証を手掛かりに、多様な学問の助けを借りながら、太古の「海人」≒海洋民集団の実像を探り出されており、新鮮な驚きでした。
前作でも日本について少し触れていらっしゃいましたが、新たに判明した事実に照らすと、言い過ぎの部分があるような印象でした。ちょうど同じ頃、国立歴史民俗博物館から、衝撃的な発表があり、弥生時代の年代が、一気に500年も遡るとされたのでした。恐らく、著者も相当にあわてられた事と拝察いたします。その後、日本列島にまつわる海人について、前作同様の研究アプローチを続けられ、本書が生まれたのでしょう。期待して読ませて頂きました。
今まで、日本列島を対象とした考古学の本は、陸上の活動を対象にしたものがほとんどで、水上の活動については、幾つかの本の中に、少しずつ散見できた程度でした。その意味では、水上、洋上の活動を一冊に集め、「海人」という視点から書かれた本書には、特別な存在価値があります。
しかし、海人の視点からの集大成は、予想の範囲内でした。これに止まらず、著者ならではの、画期的卓見をもっと期待していたのですが、さほどではなく、前作に新鮮味を感じていただけに、逆に物足りなさを感じてしまいました。
今までの日本の考古学界では、日本列島に流入してきた文化や民族については沢山語られてきました。一方、日本列島から出発した文化など無かったかのように、無視、あるいは異端視してきたようです。縄文土器とラピタ土器やエクアドルの土器との関連など、南洋の考古学を専攻された著者ならではの、踏み込んだ調査や分析も期待したのですが、、、、。日本列島に関する海洋考古学をまとめられるだけでも、大仕事だったものと解釈します。次回作では、是非踏み込んで頂きたいものです。