特定の絵師の浮世絵の作品が好きな方は他の書籍にあたったほうが良いでしょう。
本書は、世界に誇る日本の絵画文化遺産とも言える浮世絵の全貌を、作品を通して俯瞰してみることができるような編集になっています。
浮世絵が好きで、様々な絵師の残した作品を美術館で鑑賞していますが、それだけでは知識の体系化が難しいので本書のような浮世絵の流れと全貌を知ることができるムックの存在はおおいに助けられています。本書で体系的に浮世絵を学ぶことができます。
浮世絵と言いますと、大判の錦絵が脳裏に浮かびます。当然本書でもその代表作品は掲載してありますが、良かったのは絹本着色の肉筆画が多く収録してあることで、鮮やかな色合いや絵師の筆遣いの冴えを知ることができました。
コラムも充実しており、浮世絵を鑑賞する際に必要な知識や知っておくと理解が深まる内容を8つの「浮世絵の見方」の中で紹介してありました。
冒頭に浮世絵研究の権威とも言える監修者の小林忠氏の「なつかしき浮世絵ワールド」が掲げられています。
時代的には菱川師宣から始まり、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、そして河鍋暁斎、月岡芳年までの範囲を扱っていますので、初学者も愛好家もいずれも満足する内容だと思いました。
巻末に浮世絵師系譜年表があり、本書で紹介した絵師276名をそれぞれの師弟関係を見ながら色分けしてありました。
本書を通読した後は、掲載してある素晴らしい絵師の残した実際の浮世絵と対峙することをお勧めします。色合いや雰囲気が微妙に違うことがありますし、なにより絵師や摺師の思いが感じられると思います。