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25 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
カズオ・イシグロ入門編,
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レビュー対象商品: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) (文庫)
カズオ・イシグロがどういう作家かを手っ取り早く知りたい人には、本書と『日の名残り』をお勧めする。 イシグロが得意とするのは一人称による語りである。 一見、近代日本文学得意の私小説の感を受けるのだが、 作者はそこに一つの仕掛けをする。 この語り手、実は相当な曲者なのである。 視点人物が固定されているということは、 読者もまた、物語をその人物を通してしか 眺められないということを意味する。 彼が語る出来事は事実そのものではない。 彼が解釈した、言ってみれば歪められた事実なのである。 イシグロは主人公に私たちを同化させておいて、突然突き放す。 その時受ける衝撃は、現実崩壊の感覚とでも呼べばいいだろうか。 読者が憑依していた主人公の肉体から突如追い出され、 空中を浮遊する霊となって、彼の姿を目にするような感覚、 一瞬前まで現実と思って生きていた世界が、 実は夢であったと知らされるような衝撃を想像してほしい。 それを読者に感受させる、イシグロの手腕は見事というほかない。 カズオ・イシグロ。この端整な文章を紡ぐ作家は 実は、恐ろしい怪物なのである。
17 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
名作です。,
By 一方で、イシグロ・ワールドがこの作品で一つのスタイルを確立したことが読み取れます。ここを起点にして、The Remains of the Day や The Unconsoled や When We Were Orphans が造り出されて行ったたのだな、というのがよく分かる。後の作品に較べると少し小ぶりなところはありますが、何かのエキスパートである主人公が心の中にある小さな塊に胸を痛めることでストーリーが展開して行きながら、背景に時代、社会、民族といった問題が大写しに現れ出でる、という構図はこの作品でも見事です。 ミュージシャンになりたかったイシグロさんが、ひょんなことから作家になって、最初に書いた二つの作品が日本を舞台にしていた、ということに大きな親近感を抱いた私でした。
9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
イシグロの長編第二作,
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レビュー対象商品: 浮世の画家 (単行本)
日系英国人作家、カズオ・イシグロの長編第二作である。イシグロ本人も認めているが、本作と 『遠い山なみの光』『日の名残り』は同じトーンで貫かれている。 長編第一作「遠い山なみの光」に比べると 同じく日本を舞台にしたというエキゾチックさはさておき 登場人物の内面という意味では更に深化/進化した作品である。 本作は前作と同じく回想を語るという形式で物語が進んでいくが、 大きく違うのは、その語りが記憶の不確かさによって 曖昧になっているのではなく、敢えて改竄された疑いを 読者が常に抱いておかなければいけないという点である。 一方的な回想によって記録/歴史が造られてしまう怖さと そこまでしなければ生きることがかなわぬ人の哀しさと 一筋縄には読み解けぬ知的刺激に満ちた「文学」である。
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