著者は1971年(昭和46年)生まれ。まだ40歳と若いが、昔のことをきちんと調べていらっしゃる。
それは、著者が挙げた参考文献が大変妥当なものであることに証拠付けられている。
浅草芸人史としては、コンパクトに纏まっており、大変わかり易いのではないか。
と、上から目線の評を述べたついでに、若干の補足をさせて頂く。
「(コント55号がコンビでの活動を休止したのは)坂上の人気が上がりすぎたのと、
観客に(坂上の)うまさが浸透し過ぎたため『ノロマなダメ男』の設定が成り立たなくなったのが
主な原因である」
と書いていらっしゃるが、コンビで仕事をしなくなった大きな原因は、萩本が坂上を突っ込むと
客席から『可哀そう』と、声が飛ぶようになったからである。萩本はこの声で突っ込む気持ちが萎えた。
さらに、坂上の設定は『ノロマなダメ男』では決してない。むしろ設定は『なんでも一生懸命な普通の男』
つまり『当時の日本人なら誰でも持っていた資質を持つ男』と、言い換えてもいいかもしれない。
もうひとつ
「近年の(萩本は)その異常性の部分を共演者に見透かされ、いじられる側にまわることが多い」
と書いていらっしゃるが、いじって面白い人ではないことを気付いてはいない演者、演出家が多いというだけである。
萩本のツッコミは、フリがあって、オチがあって、フォローがある。
「大物をツッコむ」のが面白いだろうとの安易な考えで、萩本を突っ込むと、フォローがない分、
悲惨になるだけなのである。
萩本が「坂上への可哀そう」は笑えないと判断したとおり、悲惨は笑えない。
それにしても、軽演劇の血を引く芸人さんが伊東四朗さんしかいないのは寂しい限りである。