カウンターの端でほとんど酔っぱらっていながら聞き耳を立てて、エピソードを集めていたかのようで、とても上手な短編小説集。近作「志賀越みち」では、昭和30年代の祇園を活写したが、本作は江戸文化を代表する下町・浅草のほぼ現在が舞台。
両作とも祭りが生活の中心となる街の四季、風向きや匂いまで届いてきそうな雰囲気、肝っ玉の据わった漢(おとこ)たちと艶っぽい女たちの微妙な距離感、人情味あるれる住人など余すところなくきれいに描かれている。
それぞれのエピソードが連なって地層のような深さを醸しだす著者の小説技術は相変わらず進化しており、ぜひ「志賀越みち」と連続で読んで、比較しながら東西の違いと人情の共通項を味わうことをお勧めする。