この自伝的大河小説「流転の海」は、まだ連載中である。本になっているのは
4巻まで。当初は5巻で終わるはずが、どうもこのままだと7巻ぐらいまで行きそうだ。
第一巻である「流転の海」は、伸仁(宮本輝)が生まれた昭和22年から始まる。
父である熊吾は、個性の固まりのような男だ。
決して学はないのに、はっとするようなことを口にする。
宮本文学の真骨頂である「警句」にあふれた文章に、私は何度もうなった。
たしかに熱心な創価学会員である宮本輝の文学は、
意地悪な味方をすれば「創価学会思想のプロパガンダ」だと言えなくもない。
しかし、共産主義には共産主義の文学があり、キリスト教にはキリスト教の文学がある。
私は公明党も創価学会も好きではないが、
そういう好き嫌いを超越したものが、宮本文学にはあると思う。
第二巻以降、熊吾は幼い伸仁に、いろいろと語りかける。
それはある時は掛け合い漫才のようでもあるが、
人間の本質をズバリと突いた言葉に、雑音抜きでうなずいてしまう。
人間の生き様を考えさせられる好著である。