ああ、栗本薫だなぁ、と安心させてくれる、このくどさ。ダサさ。曖昧さのない、読者に想像や観照の余地をあたえない高圧的な語り。読んでいて疲れるし、キャラはいちいち気持ち悪いんだけれど、読まずにはいられない。だって開祖の新作なんですもの。学者や芸術家という選民も愛と欲望の前には我を忘れ高みから引きずりおろされる。アナクロなテーマです。しかし。この、あらゆる事物が相対化された世の中で、純粋性を渇望することが許される希有なフィールドが、やおいでありBLなのです。そして栗本氏はやおいに剣を捧げたドンキホーテであり、妄執的なデマゴーグなのです。悪趣味でなんぼ、滑稽でなんぼなのです。なおかつ、男同士の愛の表現の形式を整えた偉人にちがいありません。栗本薫は、戦後解放された「女性」の不安と畏れを読み解く社会学的資料として半永久的に読みつがれる作家であり、極言すれば、個々のテキストをうんぬんすることに意味はない、と思うのです。