この本は、まず解説を読んでから、本編に入った方が、より内容を解釈できると思います。
特に、主人公が舞台となった村に流刑された期間や、流刑に処される前に何をしていたのか、
どういう人脈があったのかをおさえておくと、なるほどなるほど、感じられる箇所がたくさんあると思います。
その解説を読むと、やはり主人公は弱い人なのだ、ということが分かるのですが、
その弱い人の、弱い見方に、僕は救われます。
主人公を囲む村の人達は温かい。でも、彼らに囲まれていても、救われないものは救われないし、
自分が彼らと触れ合っていても、彼らにも、どうしようもできないものがある。
自分は、どうしようもできないくらいに弱いものを抱えている。そんな自分はたくさんの人に囲まれている。
でも、『一人じゃないんだからそれで安心だろ』と言われたところで、一筋縄でいかないものって、あると思うんです。
この小説には、一筋縄ではいかない空気が漂っています。苦しみの中にいる人達が、強くなっていかず、弱いままの世界を彷徨っている。
彼らがその世界を肯定しているとか、受け入れているとまではいかないまでも、
『それって、仕方がないのかもしれないな』と勘付いているその空気。それにこそ僕は、なんだか救われるのです。
自分の中には、人と触れ合っていても埋まらないものが、確かにある。
そして自分でもどうしようもできない。だからこそ、人は人と触れ合おうとする。
この小説全体には、そんな空気もまた漂っていて、それに包まれているような気がしました。