成瀬監督映画の中で一番良くできた作品は「浮雲」だと思います。
でも一番好きな作品と言えば本作品「流れる」です。
東京柳橋の花街を舞台にして、置屋で働く女中の目から見た芸者達の哀歌が描かれます。
何と言っても見所は女優達です。
高峰秀子、岡田茉莉子。現代を代表するこのふたりの2大女優が単なる「小娘」に見えてしまう程とんでもない布陣を組んでいます。
賢い女役の田中絹代。
控えめで、おとなしく、仕事はキッチリこなし、誰からも信頼され、情のある親切な女性。
まさしく田中絹代のはまり役です。
ラスト、芸者達にお菓子を買って来て、同情とも悲しみとも云える顔で皆を見つめるところが素晴しいです。
利口な女役は栗島すみ子。
日本の映画スタア第一号です。
成瀬先生と他の女優が呼んでいる前で、一人だけ監督を「みきちゃん」と呼んでいたと言うエピソードが全てを物語っています。(成瀬監督は自分の夫の助監督だったため)
とにかく凄いの一言です。
頼りになるいい人なのか、油断のならない女なのか最後まで分からないお姐さん役です。
儲け役ではありますが、山田五十鈴ですら吹っ飛ぶ貫禄には脱帽です。
そして残りは愚かな女達ばかり。
中でも、杉村春子の達者さには舌を巻きました。
決して儲け役でもなく、下手な役者がやったらチョイ役の一言で片付けられそうな役です。
なのに魅せてくれます、これが!
芸者なのに氷を口に含んで立ったまま「お帰りなさい」。
酔って浮かれて「じゃじゃんがじゃん」と踊りまくった挙句「おえー!」と吐くシーンはおかしさだけではなく、悲しみや哀れさまで感じさせて、名女優だったんだなァとつくづく認識させてくれました。
勿論、これだけの女優達を統括し素晴しい映画に仕立て上げた成瀬監督の手腕もたいしたものです。
日本映画黄金期の名作中の名作といえるでしょう。