年末になるとこの小説を読みたくなります。始まりはおそらく11月末か12月初めあたりで、年の瀬を越え、1月末か2月初め頃に終ると思われる小説だからです。
落ち目になっている芸者置屋の住込み女中、これは著者の実体験であったと他書で読み、たいへん驚きました。文さんは露伴の没後から筆をとったとはいえ、その後は父譲りの才能で順風満帆の作家生活を送った方だと私は勝手に思いこんでしまっていました。
花柳界の女性たちの軽妙な会話、さまざまなかけひきなど、他の小説にはないユーモアがあります。ますます落ち目になっていく雇い主の境遇とは裏腹に、主人公が女中の身分から新しい事業の責任者に大抜擢されるところで小説は終ってしまいますが、読者の想像ではなく文さん自身の手になるこの続きの小説があったらよかったのに、といつも思います。