古本ブログ「文壇高円寺」でもおなじみの荻原魚雷氏の待望の新刊。前著『古本暮らし』もよかったが、本書はより活字(=本)にこだわった内容になっているようにおもう。前著とはちがい、本書には氏の自宅の本棚を写した写真がけっこう収められている。古本好きにはたまらないいい本棚である。逆に興味深かったのが、ある1枚に写る本の山の中に『1Q84』があったことだ。「ああ、この人もいちおうは村上春樹を読むんだ」とおもった次第。
印象に残ったいくつかのエッセイについてコメントしておこう。
「風太郎読書」で紹介されている山田風太郎のエピソードがおもしろい。山田はかつて座右の銘は何かと訊かれて、「やりたくないことはやらない」と答えたという。がんばることが美徳とされているようなこの時代において、こういう脱力の仕方はいいなあとおもう。この波長は、著者の波長にぴったりと合っている。
「飲んだり読んだり2」《子供のころから、規則正しく生きることが苦手で、ずっとそんなことではだめだといわれ続けてきたが、結局この齢までどうにかなってきてしまった。もちろん忠告を聞いて規則正しい生活を送っていたら、今よりいい暮らしができていたかもしれない。とはいえ、その可能性にあまり魅力をおぼえなかったのだからしょうがない。好きな時間に寝て起きて、好きなときに酒が飲めて本を読める生活以上の望みはない。》こういう言葉を読むと癒されることこの上ない。
「吉祥寺のジェンキンス」これはピート・ハミルの「吉祥寺綺譚」という古本短篇短篇の紹介。感心したのは、本棚に尾崎一雄や木山捷平や梅崎春生の単行本がずらりと並んでいる一方で、ピート・ハミルのようなビミョーな作家(というと失礼だが)の本もちゃんと読んでいるところだ。