全6編、いずれも洲崎(江東区)の遊郭を舞台にした作品である。ただ『黒い炎』だけはちょっと毛色が変わっていて、娼婦たちとは一切関係ないが。
遊郭のことを、作中では特飲街としている。空襲の影響などで、第二次大戦前に比べると規模も縮小され、かなり寂れてしまったように書いてある。その特飲街に入る橋の手前にある飲み屋が、表題作をはじめ、重要な役割を担っている。飲み屋の女将の名前は、表題作では明記されていないが、何作かでは徳子となっている。同じ名前でも微妙に違う設定だったりして、明確に連作を意識したというわけではないようだ。
最後の『洲崎の女』だけは一人称形式で始まり、おやと思ったのだが、それは導入部だけで、主役になる娼婦が紹介されると、後は三人称形式になる。
昭和30年ごろの下町遊郭の雰囲気が、登場人物たちの目を通して十分感じ取れる作品群である。