当時の警察による報告・事件関係者の証言記録・諸検事による報告などを中心に、諸記録を淡々とつづるもの。
筆者の主観はほとんど排除されている。
それというのも、筆者は一大推理を掲げてやろうなどという気概によってではなく、犯人・都井睦雄や、それに関わった時代や風土などに関して、記録を残し知ってもらいたいという信念のもとに、これを執筆したからだ。(あとがき文言を再構成)
数多くの人々の言葉を繋いだ文章は、最初から最後まで、その事実を忘れさせるほどに読みやすい。
第一部は事件発生時の警察記録から始まり、事件後までのあらましをざっとまとめてから、第二部では都井の誕生からの人生と時勢・風土などを、1年ごとの時系列に再構成していき、事件発生、そして都井の自殺と共に終わる。
事件自体のもつ刺激性だけをもとめる方は、もっと他の刊行物を求められたほうがいいと思う。(新潮文庫版の帯の文言は、どうも頂けないと思います)
事件の正確な情報を得たい、あるいは、事件の起こった背景や、都井という人物を育てた環境を掘り下げたいと思う方には、強くお勧めする一冊。