登録情報
|
アメリカの現代作家を模したと思われる作品が多いですが、圧巻は表題作の「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」です。とにかくこんなさりげない形で、渇いた絶望と諦観、愛と死を切り取れる作家は、ほかにはいないと思います。
シングルカットするなら間違いなく「りんご追分」でしょうが、言葉そのものがその心臓を号泣するようなこの感情の高ぶりは、間違いなくこの作家の真骨頂です。ほかに、「サマーブランケット」や「うしなう」など、彼女でしか描けない傑作が目白押しで、「ジェーン」など、案外これは自伝ではないのか、と僕は勝手に勘繰ったりしていますが、外国を舞台にした彼女の作品も、個人的にはとても好きです。
すでに単行本のレビューで多くのかたがこの著作に言及していますけど、敢えてレビューを書いたのは、解説の山田詠美さんの言葉がとても素晴らしいものだからということもあります。
この著作を読んでいないかたは、是非、この文庫本のほうを手にとって、江國香織という人がいかに貴重な作家であるのかを汲みとってもらえたならと思いますし、実際この短篇集は素晴らしいです。
直木賞受賞作の「号泣する準備はできていた」を読んで、がっかりしたという人が多いみたいで、できればこっちのほうを読んでもらいたかった。あの一冊で、江國香織という人がわからなかった、もう読まない、という意見を訊くのは、とてももったいないことだと思います。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|