読み終わった時は電車の中でした。心が小刻みに震えてゆっくりと泪がにじんできたので奥歯をぐっと噛み締めました。
物語はふたりの少年を軸に進んでいきます。転校してきた少年の、クラスに背を向け心を閉ざす様子に、噂は尾ひれをつけていきます。しかし、ひとりの少年があるきっかけでその少年と心を通わせ秘密を共有することで、物語は俄然キラキラと輝き出します。転校生の少年の背景にある哀しみ、生きることへの逞しさや正義、少年期特有の繊細さ切なさが、まるで渓流の美しい風景のようで、何だか自分もその場にいて傍観しているような不思議な気持ちになりました。長編ではないこの分量でのこの臨場感は素晴らしいと思います。景色のみならず風や匂いまで感じる作品でした。