「三国志」と「三国志演義」を下敷きにしながらも大胆に翻案、解釈、補筆して、とにかく楽しく読ませることを徹底した酒見賢一氏の筆力に脱帽する。
かつてNHKの人形劇(紳助竜助の語り)で初めて三国志に接し、正史「三国志」、立間訳「三国志演義」、更には「吉川三国志」も読んだが、多分、この「酒見版三国志」が一番面白い。
なんせ、劉備玄徳が、そのへんの「おっちゃん」になってしまい、妙にへそ曲がりなところを諸葛亮孔明と競い合うところは、とりわけ「三顧の礼」のシーンでは笑い転げるので要注意。
氏の中国ものは「墨攻」しかり、「陋巷に在り」しかり、とにかく中国の歴史、思想を更に面白くして読者に提供してくれる。
難点は、本気で書いたときに長編になるため、続巻が待ち遠しくて我慢するのが大変なこと。
「陋巷に在り」のときも、文庫化なのにテンポよく発刊してくれなかったので少々イライラして待っていた時期がある。
今回の文庫化では、そうならないことを切に願う。
なお、同じ文春文庫で、宮城谷昌光氏の「三国志」が同時並行的に発売されている。
見ようによっては、出版社はなかなか酷なことをするものだ。