それは、輸入版を買った唯一無二の理由です。国内版ジャケットの「燃えるキリン」なんてダリじゃあるまいし、ジョビンのクールさには似合いません。
さて、ジョビンのアルバム中の異色作であり、「究極のイージーリスニング」などと揶揄されるこの作品ですが、筒井康隆がイージーリスニングを「作曲者の苦労と芸術的野心が無視されて分類されている音楽」(笑)と喝破しているとおり、ことジョビンの出世作には不似合いな称号です。アメリカに自らの手になる音楽ジャンルの楽譜だけを抱いて旅立った彼を思えば、これは真正のボサノヴァアルバムと判るはず。まだ荒削りながら、ここでのジョビンのピアノはオーケストラとの和合を心がけながらも、立派に自己主張しています。
耳ざわりの良さ、選曲の妙などからビギナー必携のアルバムであり、食傷するほどボサノヴァを聴き尽くしたオールド・ファンが、その根本的魅力を再認識できる底力あるアルバムとも申せましょう。