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19 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
世界経済危機の諸相を理解するための濃密な手引書=エピローグ!,
By TKMT (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る (単行本)
60頁に満たない本書の後半には、「世界経済はとてつもなく複雑になり、ひとりの個人やひとつの集団では、どのように機能しているかを完全に理解することができなくなっている」(51頁)とある。むろん本書によって、すべての危機の諸相が考察されているわけではないが、それでも本書を精読する価値は十二分にある。そして繰り返し読むべき本だ。訳文もまことに周到という印象である。論じられているのは、アメリカ発のサブプライム問題だけではない。世界経済危機の根源的要因と今後の見通しが詳しく凝縮的に書かれている。「混迷」、「危機」、「幻滅」、「長期停滞」、「不確実性」の時代など、多くの呼称が多くの論者によって用いられているが、本書の主題はズバリ「波乱」の時代。著者は、信用収縮とその悪化をもたらした(証券化された)サブプライム・モーゲージ市場の混乱に対して、信頼しうる経済対策が講じられなかったことに危機の深化の主因を見出しているが(26頁)、それは単にアメリカ住宅市場の混乱という局所的問題にとどまらず、われわれの基本的な市場観とそれを支える経済理論の反省をも迫るものであるといえるだろう。 たとえば著者は次のように主張している。「景気循環と金融を扱うモデルではいまだに、人間本来の反応を十分にとらえることができていない。陶酔感と恐怖心の間で大きく変動し、何世代にもわたって何度も繰り返し、過去の経験から学んでいることを示す事実はほとんどみられない」(37頁)。ソロスが指摘するごとく、新たな金融市場理論なるものが要請されているのではないか。現在の支配的な経済理論は経済物理学を基盤としているが、そうした体系では人間の衝動や情感といった諸要素を適切に組み込みえない。ケインズの名前が登場したのも示唆的だ。グローバル化した世界市場資本主義の動向は多くの人の関心事である。本書はそのための優れた指針を提供している。
9 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
★グリーンスパン v.s. ソロスの思想を理解する一冊,
By 風林火山 (名古屋市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る (単行本)
本書は2008年春に米国出版された『ソロスは警告する』に対して、その直後にグリーンスパンがこれをかなり意識して反論を含めて出版した、というのが真相ではないだろうか?(『ソロスは警告する』のなかで、ソロスは住宅バブルの責任をグリーンスパンに帰している。また、エコノミストとしてのグリーンスパンは尊敬しながらも、金融当局者としては市場原理主義や自由放任主義に偏っていたと批判している。)一方、グリーンスパンは本書で本編(上下二巻)同様、市場主義経済や規制緩和による経済の効率性を掲げて基本的な信条は一歩も譲らない姿勢を見せると共に、今回の金融危機に始まる世界的な恐慌の様相に対しては、100年から50年に一度あるかないかの不可避な事態であるとの諦めや、ある種容認とも取れる考えを述べているように思う。また、その原因は市場関係者のリスク管理の甘さや、人間の構造的欠陥とし、極めて稀な事態に通常から備えておくことの経済的不合理性にも言及して過去を弁護している。(最近の米国議会の公聴会では判断の誤りを認めたと伝えられているが、本心なのかどうか?) もっとも、後から結果だけを見て過去のグリーンスパンの行為の責任を追及するのはフェアではない。また、グリーンスパンの主張するようにショックを吸収する柔軟性と流動性を今後の組織に求める点は異論ないし、行き過ぎた規制強化の有害性も同意するが、果たして前代未聞の今回の危機が従来の延長線的な対応策で回避出来得るのかどうかは定かでない。今後はプレーヤーである市場関係者も、規制を行う当局側も、相応の学習効果を発揮すべきと思うが、当面する社会的危機に対しては、激痛を一時的に緩和するモルヒネ療法や、場合によっては緊急大手術が必要となってくる気がする。杞憂に終わることを願う。例、国際的なモラトリアム、住宅の一部国営化、私有権の制限、etc. いずれにせよ、78歳のソロスは今回の危機は『ひとつの時代の終わり』と表現し、82歳のグリーンスパンは『危機解決後の世界は経済面で現在とは大きく違っている』と予想している。少なくとも現状からの大きな変化を予想している点は共通しており、そのような激動の時代をどう乗り切るか、世界の両巨頭の意見に我々は十分に耳を傾ける価値があるだろう。
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
この小冊子だけでも読む価値があります,
By
レビュー対象商品: 波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る (単行本)
はじめにお断りしておきますが、私は先に出版されている「波乱の時代」の上下巻の分厚い方は読んでいません。邪道かもしれませんが、しかし、より新しい情報に基づくこの「特別版」という小冊子だけでも十分読みがいがありました。もちろん、「波乱の時代」の上下巻を読んでからの方が理解は深まるかもしれませんが、そちらを読んでいないとわからないのではないか思ってこちらも敬遠されている方がいるとしたら、そのような心配をされる必要はないということはお伝えできます。以前は神様のように言われていたグリンスパーンですが、今やあちこちから非難を浴びているのはご存じの通りです。本書も、後半はバブルを招いた責任者という批判に対する反論のように読めます。しかし、それでもやっぱり、グリーンスパンが今の世界経済の混乱をどのように見ているのかについては知る価値があるな、と思いました。しかも、FRB議長時代の発言よりもずっと、わかりやすく語っています。ページ数は少ないけれど、525円。"Newsweek"よりちょっと高く、"東洋経済"よりちょっと安いという価格帯です。 世界経済の混乱の様子が日々変わる状況を考慮すると、このような本は鮮度も非常に重要です。だから、改訂増補部分だけをこのような形で抜き出して追加出版するというのは、良いアイディアだと思います。また、これだけなら、あっという間に読めます。
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