現在、目にする法隆寺は聖徳太子創建のものではなく、再建(新創建)されたものであることは昭和14年の発掘調査の結果から明らかになっている。新創建の法隆寺がいつ、誰により何の目的で建てられたのか? 日本書紀は黙して語らず、ここに様々な仮説が立てられている。武澤氏は建築学の専門家であり、最近明らかになった法隆寺の五重塔と金堂の建設木材伐採年のデータなどを駆使して伽藍造営の経緯を明らかにしていく。
そして嘗て「怨霊説」の根拠とされた中門の真ん中に立つ柱について別の合理的な解釈の可能性を示す。さらには我が国の中央集権国家建設のなかでの仏教文化受容の面にまで進む。これで『法隆寺の謎』が全て解決されたわけではなく、謎がさらなる謎を呼ぶ面もあるが、知的好奇心を刺激する良質な論考である。文章はよく練れていて読みやすい。
法隆寺、そして日本史のなかで特にダイナミックなこの時代に関心のある人に是非お薦めしたい。