◆「都市伝説パズル」
松永俊樹の家で、サークルの飲み会が開かれた。
散会後、ケータイを忘れていたことに気づいた広谷亜紀は、松永の家に
戻るもインターホンに対する応答がなく、家のカギも掛かっていない。
酔って寝てしまったと判断した亜紀は、彼を起こさないように、
暗闇のなかでケータイを探し当て、そのまま帰っていた。
翌日の午後、宅配業者によって殺害された松永が発見された。
現場の壁には「電気をつけなくて命びろいしたな」といった
血文字が書かれていた。
実は今回の一連の経緯は、亜紀たちが飲み会の際に話題にした
都市伝説と酷似しており、サークルの誰かが見立て殺人を行った
と考えられたのだが……。
《安楽椅子探偵もの》。
三角関係のため、被害者に怨みを抱いている友人、第一発見者など、
疑わしい人物を犯人と仮定し、綸太郎と警視が推論を繰り広げます。
ポイントとなるのは、現場に残された血文字。
「都市伝説」といったおどろおどろしいイメージが重ね合わせられていますが、
その底にあるのは、あくまで功利的な犯人の打算です。
事件の解明が、新たな「都市伝説」の萌芽と
なったことを暗示する結末も洒落ています。
◆「中国蝸牛の謎」
往年の推理作家が、自宅の二階にある書斎で
籠城しているとの知らせを受けた法月綸太郎。
密室状態の書斎の窓を割ってなかに入ると、作家の姿は見当たらず、
なぜか、あらゆる家具や調度が上下あべこべにひっくり返されていた。
のちに作家は、書斎の真下にある寝室で縊死死体となって発見される。
書斎の床を対称面にした、上下軸の逆転に込められた意図とは?
クイーン
『チャイナ橙の謎』の本歌取りが目指された作品。
作中で、カタツムリの殻の成長パターンについて薀蓄が語られるのですが、
《密室》ものではお馴染みの、ある器具を、そのカタツムリに見立てるという
冴えたアイディアが示されています。
ただ、それだけでは、どうしても「密室のための密室」といった自己目的化した
トリックであることは否めないため、少しでも動機に説得力と必然性を与えるべく、
推理作家を被害者にし、その上で、「名探偵」である法月綸太郎を発見者にする
というシュチュエーションが、わざわざ設定されることになります。
◆「縊心伝心」