法律英文では、find、hand、hear、showなどの日常語が特殊な意味に使われることがある一方、consideration や deed のように日本の法律用語に相当語のない用語もあります。また、日本語の「公序良俗」を public order and good morals と直訳してもわかってもらえない。(public policy、policy of the law と言えば分ってもらえます。)
本書は、「英米法律語の歴史的、制度的、言語的背景の解説と、若干の英語の高等常識の紹介」を試みたものですが、and や or のような簡単な語句の解説にも相当のスペースを割いています。これがなかなかの難物で、簡単には読めませんが、法律英語を学ぶためには、一度は潜らねばならなう関門でしょう。契約書に and/or をうかつに使ったために、裁判所から無効とされたケースが多いそうですから、油断できません。
英文契約書の入門書は弁護士の著作が多いので、法律英語の語学的解明に関しては、物足りないものが多い。その点、早川先生は、もともと英語の専門家ですから、英語の解説はまさにお手の物、語源から語義の変遷、語法、押韻から韻律、略語の使い方から引用の方法にいたるまで、深い学殖に裏打ちされた記述は、類書の追随を許しません。その上、記述がユーモアに満ちており、楽しく読める読み物に仕上がっています。
本書を紐解けば、法律英語に対するもやもやが晴れて、視界が一段と広がります。海外事業部、法務部、知財部その他英文契約書を取り扱う部署に配属された社員の必携書と言えましょう。