中巻は、風土の性質・奴隷制・家庭における女性・政治的隷属・土地の性質・国民の性質や習俗や生活様式といった事柄が国制や公民状態にどう影響し、どんな実定法を作らせたのかについて論じた第3部と、商業・貨幣・婚姻がどのように国政・公民状態・実定法に影響したかを論じる第四部が収録されている。
一読して、上巻とは違って読みにくく、読み進めるのに骨が折れた。なぜなのかを考えてみると、上巻の内容が未来に向けての新しいヴィジョンを描いていて、実際にアメリカ合衆国や日本で採用された制度の概要だったのに対して、この中巻の内容は、特に第3部では、その後人類学や社会学で否定され、克服された人種的・地域的・性的謬見が多く収録されているからだ。ヘーゲルの「歴史哲学講義」で見られた蔑視的記述は、上巻では控えめだったが中巻では数多く存在する。もちろん時代的限界だったのは理解できるが、読んでいて気持ちのいいものではない。18世紀の精神史を探るという視点で読んでいけば、興味深いのだろう。
一方、第4部での商業についての記述は、18世紀当時の世界の見え方を、先立つ時代の商業史を辿ることで明らかにしてくれていて面白い。航海術についての具体的内容は今まであまり知らなかったし、貨幣についての部分は、意外にも経済学的な分析がなされているのに驚いた。アダム・スミスが「国富論」を発表する以前にはフランスの学者の経済分析が進んでいて、スミス自身もフランスで多くを学んだという逸話を思い出した。
普通イメージする「法の精神」という書物とは相当に違っている内容の一冊。