本書「法と立法と自由」3分冊は、ハイエクの法哲学、政治哲学、社会哲学の分野における集大成というべき大著です。
ハイエクはリバタリアンだと言われていますが、決して自由放任主義ではありません。
彼はルールを重視します。
そしてそのルールは人為的に設計されたものであってはならず、個人が自ら取得した知識や経験、あるいは慣習に基づく自生的なものでなければならない(いわゆる自生的秩序)という点を、ハイエクは繰り返し強調しています。
その背景には、人間が自分を万能だと考えるのは驕りであり必ずうまくいかなくなる、人間は学び経験を積むことによって成長していくものだという謙虚な人間観があります。
3分冊の中では、以上のような基本的な思想に基づいて、コスモス(自生的秩序)とタクシス(人為的な組織)、ノモス(人間の自由が確保されるための普遍的ルール)とテシス(組織の法)、カタクラシー(自生的に発生する市場秩序)といった概念が提唱されています。
翻訳に難がある部分も散見されますが、原書が難解だったためやむを得ないのだと思います。また読みづらいというほどではありません。
本書は20世紀の経済学、法哲学、政治哲学の巨人だったハイエクの到達点であり、後世に残る大著だと思ます。