法学の初学者を対象にして書かれているので、法哲学、法制史等が具体例を挙げて分かりやすく書かれている。しかし分析の視点が公平ではなかったり、具体例の挙げ方が適切でなかったりしたような箇所が所々見受けられた。
例えば欧米と日本の法制度を述べている箇所では、いかにも欧米型の法制度の発展が理想的で日本型の法制度の発展は理想的でないように書かれている。しかし法学の初学者を対象にしているのならば、特定の考えのみを伝えるのではなく欧米と日本の法制度の発展の特徴を併記して述べた方が初学者に考える材料を与えるという意味でよかったと思う。
また日本の行政権限の増大と議会の役割の低下の例として官僚の政治家に対する優位性が挙げられていたが、これは行政権と立法権の問!題ではなく行政権内部の問題である。さらに最も合理的な選挙制度は比例代表制であるとか自治体は小さな自治体が望ましいと述べているが、そもそも選挙制度に「最も」合理的な制度は存在しないし、大きな自治体も有能な人材が確保できるなど悪いことばかりではない。
著者は学者であるからご自身の考えを本で表現するのは悪いことではない。しかし初学者向けに本を書くのならば、著者の考えを主張するだけでなく著者以外の考え方も存在することも紹介したほうが初学者に考える機会を与え、初学者の向学心をそそるようなよい本になったのではないかと思う。