帯のない状態で手に取り、ちょっと変わったところのある、
理科系の頭脳を持つ生活者の小説だと思って読んでいた。でも違った。
「西の魔女が死んだ」もそうだったけど、不可思議なことを含む世界の小説なのだった。
ファンタジーの系譜。
代々伝わるぬか床を託され世話することになった上淵久美。
しかし、そのぬか床からは人が生じてくるのだった。
酵母の研究者である「男の性も女の性も選ばない」風野さん。
ぬか床を先祖の土地に返すため、彼と島に渡り、
延々と続く、そして画期的な飛躍も含む大きな生命の営みに触れる‥‥。
挿入される、細胞の内部そのものの中での新たな生殖活動の飛翔の物語。
読んでいて、自分の言葉に翻訳できない(知識がない)もどかしさは感じるものの、
土着的な不思議さを発酵レベルで語りきってあり、
世界を見る目をもうひとつ増やしてくれる小説である。