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また『河童』では精神障害が逆に正常に転化するような世界、『或る阿呆の一生』の狂人の子供という、遺伝に苛まれる芥川の姿、といった世界は少なからず我々が隠し持っているそれに共通していることにふと気付かされる。これらの作品はそういった我々の押し込められている何かを、表面に浮かび上がらせるような力が存在する。小説家の技量と言うより、人間としての芥川の魅力に触れられる一冊と言えよう。
他の作品はしかし、フィクションとは言い難い内容です。死んだ多くの芸術家が引き合いに出てきます。自分は狂気に近づいている。正気を保とうとすれば、死ぬしかない。そんな悲痛なメッセージが、文中の随所から漏れ聞こえてきます。そういうギリギリのところまで芥川龍之介を追い詰めたものは何だったのでしょう? 半ば支離滅裂な、起承転結のない散文に、死を意識した芥川の不気味な叫びが聞こえてきます。
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