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珍しく三人称を使っていてはじめは違和感があったが、読み進めるにつれて、その効果がなんとなく分かってきた。それまでなじんだ「私」から一歩進んだ、他者(それはなにか?)の世界を描こうとする試みではないかと。ためらいながら進み、立ち止まり、選択し、またためらい、振り返る。こうして思考することが、狂いつつある世界の秩序を取り戻すことにつながるのではと思った。ジャン・フィリップ・トゥーサン(仏)の『ためらい』という作品があるが、それとはまた違った味わいのためらい方がある。ナボコフもそうだが、私はこういう回り道の多い「ためらい文学」が好きだ。
本書でうれしいのが、おいしそうな食べ物が出てくること。ほうれん草のオムレツ風グラタンや、スグリのジャムを添えたクレープなどが食欲をそそる(ヌテラってなんだろう?)。特に、肌寒い日に彼が郵便配達夫と楽しむ珈琲がなんともいえずおいしそう。
この作者の作品はどんどん面白くなってきていると思う。
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