シリーズ第1作で松本清張の序文と江戸川乱歩の解説が収録されているというまさに決定版と言っていいと思う。
密室殺人、謎の黒幕等々、発表当時の探偵小説にはよくある設定が詰め込まれていて懐かしくもあるし読んでいて楽しい。
舞台当時の風俗については街中の様子から公判、処刑も含めて的確に描写されていて感心する。
訳文は口語、隠語、符丁から方言まで駆使して雰囲気を出そうとしているが、かえって不自然になってしまっていて残念だ。
例えば判事が被害者をガイシャ、犯人をホシというような警察内部の用語を使うわけがない。
言葉使いで身分がわかるので、身分を隠して行動する際にはありあえるかもしれないが、公判では使わないだろう。
現代の日本の裁判で警察官が証人として発言される際に使うだろうか。
もしかしたら「鬼平犯科帳」の影響を受けているのかもしれないが、若いころ無頼に身を投じた鬼平と一緒にするのはおかしい。
中国語のルビも首をかしげるものが散見されたが、英語の原文がそうなっているのであれば仕方がない。