冒頭で筆者は語る。今作は、本土のジャーナリズムの中で今まで支配的だった沖縄への左翼的自虐的な視座には汲みしないと。そして、その通り、650ページにも及ぶ長編を読み終えて、沖縄の戦前戦後史を賑わした有名無名な人物たちに焦点をあてる事で、戦後63年、今まで正面切って語られる事が少なかったその陰と闇の部分が解き明かされるルポルタージュとなっている。
「海燕ジョーの奇跡」のモデル、伝説の義賊、ヤミ金のドン、反米反基地の闘士、知事選の泡沫候補、国立大卒の老舗クラブのママたち、政財界の陰の黒幕に、山中貞則や瀬長亀次郎、川平兄弟の父親から安室奈美恵の育ての親まで、様々な職業、名士からアンダーな者たちが、深く絡み合い、結びつき、その過酷な状況を生き延びてきた歴史が読み取れる。
そして、また今作では、沖縄本島の奄美ら周辺諸島への露骨な差別、搾取についても言及する。被差別を受けた者たちが、更に差別する過酷な現実に触れながら、本土への早期復帰を果たしながら、沖縄本島からもアメリカからも見捨てられた奄美の人々に、光であれ闇であれ、戦後沖縄の復興の礎となったその生き様のヴァイタリティを見る。
善悪が混沌とした世界の彼方には、やはり基地の街、被差別の街とのイメージが浮かび上がってくる今作、沖縄という数奇で余りに翻弄された辛苦の歴史を辿って来た者たちの壮絶なクロニクルが胸に迫る力作。「月刊PLAYBOY」誌に長期連載されていた記事を基にしているが、あるパートでは「噂の真相」、またあるパートでは「週刊実話」(笑)といった趣で、面白く読める。連載モノだけあって、話題のライブドア事件や守屋事務次官収賄事件も俎上に挙げられる一方、稀代の反骨ライター竹中労の著作が節々に引用されているのが懐かしい。
佐野真一には、今年甘粕正彦についての著作もあるが、個人的にはこちらの方が面白かった。