最初にこの本を読んだのは極真を始めた四年ほど前だった。
その時は、この本の何がすごいのか、わけのわからない独特な言い回しで曖昧に表現しているようにしか見えなかった。
しかし、武術を始めて三年が経った今、この本を読むとまさに目からウロコという感じがした。私の習っている流派は空手系統の古武術である。ここに書かれている事、特に「浮く事」に関しての記述は、私の疑問に答えてくれた。理解はできたし、「浮く」ために何をすれば良いのか、その鍛錬法も大体わかった。まさに秘伝書にふさわしい。何も抽象的な事は書いておらず、終始具体的な話をしている。しかし、そこまで稽古が進んでいない人間には何を言ってるのか、さっぱりわからないだろう。
一つだけ、この本に関して理解できない武術初心者にアドバイスする事があるとしたら、理解できなくても良いから本棚にこの本を置いておきなさい。いつか理解できるようになった時、稽古の質が変わるから。という事だろう。
ここまで素晴らしい本だが、残念な事が一つある。
それは、他流への理解が乏しい事だ。例えば、合気道のかまえとして紹介されているものは塩田剛三が工夫して作ったものだし、合気あげに関してはまったく違う。そもそも、指が閉じてしまっている。合気あげは五指が開かなくてはいけない。
また、優れた身体操法が日本独自、沖縄独自のように語っている節があり、中国拳法にはそれがないような発言も見られる。しかし、中国拳法にも直線を使って円を描くという技術はある。
ただし、語っている術技は全て本物である。
真摯な武術修行者にはしっかりと研究してもらいたいと思う。書いてある事は全て秘伝クラスの難しい動作である。修得するのは容易ではないだろうが、どの流派を学ぶにせよ、ここに書かれている事を修得する鍛錬法はあるはずである。是非、この本を利用して進歩してもらいたいと思う。