沖ヒカルの書く文章世界は、まさに彼岸だ。
こちらの世界のものではなく、
確実に遠く、向こうの世界のもの。
理解できぬ者を容赦なく置き去りにする奇怪な文言の羅列。
ちょっと気の利く見方をすれば、
それは単なる駄洒落(ダージャーレー)であったりするのだが、
気がつかねばただの暗号文のようにすら受け取れることだろう。
この本にはギャンブルとともに生きる男の、
非常識なる日常が、わりと普通に、日記として、淡々と描かれている。
無意味と狂気と必然と偶然、それから奇跡。
さまざまな「狂い」が、
筆者の、恥じらいに満ちたサービス精神によって彩られ、
不思議な世界を作り上げている。
どうにも説明のしようがないのだが、編集者も含めて、
よくぞこのような才気溢れる乱文を単なる放置プレイにせず、
一冊という本の形にまとめあげるものだと感心しきりである。
とにかくこれ以上ないほど
読み手を選ぶ1冊であるが、私は好きだ。
死ぬまでに、最終ページまで読めるかどうかは疑問であるが、
ときどき手に取り、めくらずにいられない。